ふじの治療室

犬と鍼灸師

『正しい腰痛のなおしかた』という恥ずかしいタイトルに手を出したら戻れなくなった

人の痛みをとったらお金が貰える仕事をしています。治療家…なんて大それた肩書きには抵抗がありますが、でも治療家です。そんな治療家あるある「自分自身が次のレベルに達したら、そのレベルではちょうどギリギリ手に負えないような案件が飛び込むようになっている」とのこと。その案件にぶつかると、苦戦する、虚勢を張る、項垂れる、開き直る、苦悩する、他人のせいにする、基本に戻る…基本ってなんだ。「自分の基本ってなんだ???」といよいよワケがわからなくなったときに書斎の本棚前で座り込むときに目に入る本がある。この仕事始めて最初の壁にぶつかったときに買った本…。その名も


 



 


なんて真っ直ぐなタイトル!これを読めば腰痛は治せるようになる!やったよ父さん!なんてわけにはいかないのだけど、今考えると学校卒業してからしばらくはバカみたいな施術を続けていたので、壁にぶつかるのは早かった(早くて助かった)。


 


 



 治療は最終的に理論的裏付け、つまり理由がなくてはなりません。私の個人的見解を示したこの本は脊柱が人体を解剖学的機能的に支えているという事実に基づいています。機能解剖というものが基本線であるべきだと私は考えています。


ーーレネ・カリエ



 



背骨が正常な状態での働きはどうか。誤った使い方をして損傷を受けたらどこに痛みを起こしうるのか。どのように損傷を受けて、どのように誤った使い方がなされているのか…。異常と向き合うには正常がどんなものであるかを理解していないといけないわけで、機械不良の機械の問題点を見つけて正す。そういうお仕事。それができてこそのプロなんだとカリエ博士に怒られている気分に。 


 


鍼灸学校で勉強していたつもりになっていた解剖学、生理学、等々。現場に出てから知識の足りなさに気づき、勉強不足が日に日に自分の首を占めていく。それではどうにもならないということで、基礎医学の勉強をゼロからスタート。そのゼロから始まった道は今になっても螺旋状に続いていて終わりが見えない。なんというものに手を出してしまったんだ。なんという道に進んでしまったんだ。『後悔』という感情が湧いていると同時に、何故か『楽しい』という矛盾。人間のありとあらゆるものを施術対象にしたいと思えてきている。人間のカラダのありとあらゆるものが知りたい…。もっと…もっとだ!解剖学関連の書籍をバカみたいに買っている。人間はバカになると楽しい。


 


書籍ごとに書いてあることが微妙に違うのが解剖学書。解剖する者の見る目も違えば、ひとりひとりのカラダも違うので当然なんだけども。私達は医者ではないのでカラダを切り開いたり、X線で中を見ることはできないから、あらゆるパターンの身体イメージを持っていないといけない。


 


腰痛において痛みを起こす組織は、筋肉、前縦靭帯、後縦靭帯、棘間靭帯、椎間板の外層輪状繊維、神経根、硬膜、椎間関節があるんだよとカリエ博士は優しく教えてくれているけれど、腰痛に対してどれだけの組織をイメージしながら施術してるかどうかで結果が大きく変わるから面白い。自分の中でイメージが増えてくると施術がどんどん面白くなってくる。私はよく施術中にため息をついて嫌がられるんですけど、アレ面白がってるんですよ。直さなきゃいけないなと思ってはいます。でも直せません、ごめんなさい。