ふじの治療室

犬と鍼灸師

他人の日記は香ばしい

ここ最近は人の日記が読みたくて色々漁っているのだが、昨夜に読み終わった『池波正太郎の銀座日記』が良かった。 “食”に対して並々ならぬ執着があるのがわかる。何を食べたかをよく書かれているので、その食生活で「痛風が辛い」と言ってるははジョークなのかなんなのかと思いながら読み進めた。

 

文庫本の裏側には“亡くなる2ヶ月前まで8年間の連載”とあり、終盤になると体調が悪そうなことが書かれている。その数年前から体重も徐々に減っているのを「通っている鍼医のおかげで健康になったから」と誇っているのだが、これも最後を知っている私は「その食生活でその減り方はおかしい」と思ってしまう。

 

一番興味深かったのは、作者が気学(占いのようなもの)に嵌っていることで、日記の中で亡くなる年の前後3年間を「自分にとってもっとも危ない期間」としていたことだ。その3年間を乗り越えればやりたいことがまだあるので大人しくしていようと書いていたのだが、現実は乗り越えることができなかった。突如の日記の終わり、あとがきには「急性白血症と診断された」とある。享年67歳。

 

本の題に銀座とある。私にとって思い浮かぶ銀座は学生時代に深夜バイトしていた漫画喫茶のあった裏通りにある雑居ビルで、ほとんどが終電を逃した酔っ払いの客相手の仕事だった。大変そうに思うかもしれないが、客は1日に10人以上来たことがなく、0人だったことが何度もあった。とにかく暇で暇で仕方がない仕事で「眠気を我慢すること」が最大の試練だったのだ。今思い出しても特に思い出がないバイトだ。何と言っても人が来ないのだから仕方がないだろう。「トイレで鍵をしたまま酔いつぶれた男」や「エレベーターに小便をかけてから来店する男」など後者は警察沙汰にもなったエピソードがあるのだけど、それはまた今度…いや、あまり話したくないな…面白くないから。