ふじの治療室

犬と鍼灸師

Last Days 坂本龍一 最期の日々

見ようかどうか迷っていたが意を決して再生した。
迷っていたのは自分のメンタルがやられてしまうのではないかと警戒していたから。私は「悲しい」という感情に異常なほど弱い。やられてしまうとしばらく復活できない。
しかし、結果は見てよかった。特に坂本龍一を好いている訳ではない。でも、彼の人生の最後というものをどう捉えているのか、どう受け止めようとするのかを知りたかった。
とある末期ガン患者が「ストレスのないようにお笑いDVDばかりを見て過ごしていたらガンがなくなっていた」という話があるのだが、余命宣告をされている人間がそんな生活をできることが特別である思い、ほかの人の参考にはならないだろうと思っていた。
実際、私の父の最期も「何もしたくない」という状態であった。
坂本龍一はどうか。見ていると最期を受け止めている様子であった。音楽が作りたいという意欲に溢れているように見えた。しかし、それもまだ余裕がある段階であった。日が経つにつれて音楽を聴くこともできなくなっていく。
音楽を聴くには体力がいる。
そう呟いた。音楽は無理だけど『音』なら聴ける。そうも呟いた。
その『音』から作曲を始めようとする場面には震えた。そこまでしても、打ち込んできたものがある。人生をかけてきたものがある。そして、最期の時まで彼の指は鍵盤を弾くように動いていた。羨望の目で見てしまった。
「私の最期は…」そう思ったところで思考を止めた。自分に今できること、やりたいこと、求められることを一生懸命やろう。
記録を残していた坂本龍一と、それを公開してくれたご家族に感謝します。